「たんぱく質」と聞くと
- 成長期の子どもに必要な栄養素
- ジムで筋トレする若い人が飲むプロテイン など
若い人に関係する栄養素と思われる方も多いのではないでしょうか?
「自分や高齢の両親には、そこまで関係ないかも…」と思われがちですが、実は逆でした。
1日の食事にしめるたんぱく質の割合を、国がいちばん高く定めているのは、若い世代ではなく65歳以上の方です。
しかも、昼食のたんぱく質摂取が、2年後の筋量低下のリスクを抑えられたことも報告されています。
結論
65歳以上の方にとっての「たんぱく質」とは、筋肉と運動機能(自立歩行など)を維持し、健康寿命を支える重要な栄養素です。食事量は減っていっても、たんぱく質をしっかり意識してとっていく必要があります。
この記事でわかること
- 65歳以上が、どの世代よりもたんぱく質を必要としている理由
- 65歳以上が必要な1日のたんぱく質摂取量と効果的な摂取タイミング
- たんぱく質摂取で気をつけたい注意点
- 今日からできる食卓の工夫と、毎食準備するのが大変な時の賢いおぎない方
読んだあと、今日からできる食卓の工夫を知り、安心して食事に向き合えるようになります。
高齢者のたんぱく質不足はなぜ起こる?多く必要になる3つの理由

高齢者に多くのたんぱく質が必要なのは、筋肉を維持し、歩く力を保つためです。
年齢とともに、筋肉は少しずつ減っていきます。それを食い止め、自分の足で歩ける状態を保つことが、健康寿命を延ばすカギになります。
1.たんぱく質は筋肉を維持する栄養素だから
たんぱく質は、私たちの体や筋肉をつくる大切な材料です。毎日しっかりおぎなうことが、筋肉の衰え(サルコペニア)への備えにつながります(※3)。
一方、筋肉は20代〜30代をピークに徐々に減少します。特に50代以降~65歳以上では、減少スピードも加速するといわれています。そこで、筋肉を作るために必要なたんぱく質まで減少すると、筋肉の量はどうしても減ってしまいがちです。
- 「最近、歩くのがしんどくなった」
- 「ペットボトルのふたが開けづらい」
そう感じたら、サルコペニアの入り口かもしれません。
2.自分の足で自由に歩き続けることが健康寿命につながる
年齢が上がるにつれ、筋肉量は落ちていくのは、ごく自然なことです。
しかし、筋肉量の減少(サルコペニア)がもたらす影響でもっと深刻なのは、筋肉が減るという事実そのものより、それによって疲れやすくなったり、気持ちまで気おくれして外に出る機会が減ってしまうことです。
外に出ないことが増えれば、さらに筋力が落ちる……という悪循環にはまりやすくなります。 健康と介護が必要な状態のあいだにある弱った状態を「フレイル」といいます(※4)。
フレイルに備え、自分の足で自由に歩き続けられる体をつくっておけば(※2)
- 買い物や旅行
- 長く続けたい習い事
- お孫さんとの外出 など
やりたいことを諦めずに楽しめます。「自立して歩ける期間」を長く延ばすことこそが、本当の健康寿命につながるのです。
3.だれかに頼らず自立した生活がかなう
- 「誰かの手を借りずに好きなタイミングで外出したい」
- 「子ども世代にも余計な心配や負担をできるだけかけたくない」
そう思う方も、多いのではないでしょうか。 ずっと家族やお孫さん、友達と一緒に笑って、楽しい時間を過ごしたい——
たんぱく質を意識した毎日の食卓は、「自由で前向きなシニアライフ」を支える一番の土台になります。
では、1日にどのくらいとればよいのでしょうか。
高齢者に必要な1日のたんぱく質摂取量と、厚生労働省が示す目標量

体重50kgの方なら1日およそ60g、50kgの方ならおよそ60gが目安です。
近年、単なる不足回避ではなく「筋肉量の維持・向上」や「高齢期のフレイル(筋肉の減少)予防」を目的とした場合、体重1kgあたり1.0〜1.2g以上をとる考え方が示されています(※1)。
1日にとりたい量の目安
目安は体重1kgあたり1.2g。体重50kgなら1日60g、1食あたり20g前後です。 きっちり計る必要はありません。毎食に一品あるかどうかで見当がつきます。
ご自分の体重で見る、1日の目安量
体重別 1日のたんぱく質の目安
| 体重 | 1日の目安 | 1食あたり |
|---|---|---|
| 40kg | 48g | 16g |
| 45kg | 54g | 18g |
| 50kg | 60g | 20g |
| 55kg | 66g | 22g |
| 60kg | 72g | 24g |
| 65kg | 78g | 26g |
| 70kg | 84g | 28g |
体重1kgあたり1.2g(※1)で計算した数値です。右の「1食あたり」は、それを3食で割ったものです。
毎食きっちり同じ量にそろえる必要はありませんが、1食およそ20g前後と覚えておきましょう。
厚生労働省が示す年齢別の目標量(2025年版で見直されました)
最新の厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(※1)では、超高齢社会への対応や最新の科学的根拠(エビデンス)を取り入れ、栄養素のなかでもたんぱく質の摂取量が見直されました。必要となるたんぱく質は、年齢別に3つの段階で示されています。
年齢別 たんぱく質の目標量(下限~上限)
| 年齢 | 目標量(下限~上限) |
|---|---|
| 1〜49歳 | 13%~20% |
| 50〜64歳 | 14%~20% |
| 65歳以上 | 15%~20% |
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(※1)
特に変更があったのは、65歳以上の下限値です。今回の最新版では下限値が15%~となり、全年齢のなかで最も多くの割合でたんぱく質をとる必要があるとされました。
なお旧基準「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、13~20%でした。
高齢者のたんぱく質摂取の注意点。目標量には上限もあります

たんぱく質は、とればとるほどよいというものではありません。
目標量には上限もあります。65歳以上を含む全年齢で、20%が上限とされています(※1)。
足りないかもしれないから、増やせるだけ増やす——ではありません。毎日の栄養素がちゃんと届いている状態を続けることが目標です。
では、いまの食事で足りているかは、どう確かめればよいのでしょうか。
毎日の食事で高齢者がたんぱく質を確実にとる方法と食材
むずかしく考える必要はありません。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のどれかが毎食に一品あれば、必要なたんぱく質をおぎなうことができます(※5)。
では、どんな食品をとればいいのでしょうか。
主食だけの食事では、たんぱく質は足りません
主食だけでとれるたんぱく質の量(目安)
| 食品 | 目安の量 | たんぱく質 |
|---|---|---|
| ゆでうどん | 1玉(230g) | 約6g |
| 食パン | 6枚切り1枚(60g) | 約5g |
| ごはん | 茶碗1杯(150g) | 約4g |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに算出(※6)。うどんは「ゆで」、ごはんは炊いた状態の数値です。1食分の量は一般的な目安です。
お昼にゆでうどんを1玉だけ、という日は、一食でたんぱく質約6gです。焼き魚を一切れ添えると18gが足されて、24gになります。
足りないのは「量」ではなく、たいてい「もう一品プラス」することです。
毎食に一品プラスを!たんぱく質がとれる食品
一品でとれるたんぱく質の量(目安)
| 食品 | 目安の量 | たんぱく質 | |
|---|---|---|---|
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焼き魚(さけ) | 切り身1切れ(80g) | 約18g |
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鶏むね肉(皮なし) | 80g | 約19g |
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豚もも肉 | 80g | 約16g |
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木綿豆腐 | 半丁(150g) | 約11g |
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納豆 | 1パック(45g) | 約7g |
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牛乳 | コップ1杯(200ml) | 約7g |
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卵 | 1個(50g) | 約6g |
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ヨーグルト(無糖) | 1パック(100g) | 約4g |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに算出(※6)。肉・魚は「生」の数値で、目安の量も調理前の重さです(焼いても、たんぱく質の量そのものは減りません)。1食分の量は一般的な目安です。
魚や肉なら、一品で16〜19g。先ほどの「1食あたり20g前後」に、ほぼ届く量です。だから、数えなくても、一品あるかどうかで見当がつきます。
高齢者のたんぱく質の取り方と、効果的にとるタイミング

たんぱく質は、1日の合計だけでなく、朝・昼・夕の3食それぞれでとることが大切とされています。
国立長寿医療研究センターは、こう述べています。
三回の食事それぞれにおいて良質なたんぱく質を食べることは、筋量を維持するために大切である
一般的に多いのは、次のような食事です。
- 朝……パンとコーヒー、あるいはお茶漬け
- 昼……うどん、そば、菓子パン
- 夜……しっかりお肉かお魚
1日の合計では足りていても、朝と昼にほとんど入っていません。夜にまとめて挽回する形になっています。
報告されているのは、男性を対象にした調査の結果です。1日の合計量の多さだけでなく、特に昼食のたんぱく質が多い群で、2年後の筋量低下のリスクが抑えられていました(※7)。
朝と昼に、1品プラス
1日の合計が足りていても、朝と昼が薄いままでは「3食それぞれ」の形になりません。不足しがちな朝と昼、いつもの食事に1品プラスするところから始めましょう。
たんぱく質を毎食そろえるのが難しい高齢者の対策と心がまえ

毎食そろえられない日があっても、大丈夫。
毎回の食事でたんぱく質をとる大切さは分かっていても、1〜2人分の食事の準備は、作るほうが手間がかかる場合もあります。ましてや、毎日3食に気を配ることは並大抵のことではありません。
- 毎食プラス1品のたんぱく質を意識する
- 時には、外食や宅食でおぎなっていく
健康を意識するあまり、窮屈な毎日を過ごすより、無理をしない活き活きした毎日こそが、体だけでなく心の健康維持にもつながっていきます。
よくある質問
Q. 高齢者がたんぱく質を摂りすぎると、体に悪いですか。
A. 極端に多く摂取すると、体への負担や不調につながることも。
たんぱく質の目標量には上限があり、全年齢で20%上限とされています。毎食に一品そろえる形が理想的です。指針にも「上限のないたんぱく質の摂取が健康増進に有益な効果をもたらすわけではない」と明記されています(※1)。食事はあくまでもバランスが大切です。
Q. プロテインやサプリメントでおぎなってもいいですか。
A. 公的な資料では、サプリメントの是非や、栄養根拠までは述べられていません。
正しい補い方としてあげているのは、肉類・乳類・魚介類・大豆製品といった「食品」から摂取することです。まずは毎食に一品あるか?食材から摂れるよう意識していきましょう。
Q. 腎臓が悪いと言われています。同じようにたんぱく質基準を守ればいいでしょうか。
A. いいえ。腎臓の状態によっては、たんぱく質を制限する必要も出てきます。
必ず主治医・管理栄養士の指示をご確認の上、判断するようにしてください。制限が必要な場合の食事は制限食のえらび方にまとめています。
Q. お肉が食べにくくなってきました。どうたんぱく質をとればいいでしょうか。
A. 魚・卵・豆腐・乳製品でも、同じようにたんぱく質はとれます(「一品でとれるたんぱく質の量」の表をご覧ください)。また、やわらかく調理されたものを選ぶ方法もあります。やわらかい食事について。
Q. まだ60代前半です。体力に自信はありますが気にする必要はありますか。
A. 元気な方だからこそ、意識してたんぱく質をしっかり摂りましょう。
食事量に対するたんぱく質割合の目標値は、50〜64歳では14~20%で、49歳までの13~20%よりすでに高く定められています。元気なうちに、たんぱく質を継続的に摂ることで体力を保つ習慣をつけておきましょう。
まとめ:たんぱく質「毎食一品」で高齢者の健康寿命を延ばしましょう

たんぱく質は筋肉と歩く力を保つため(サルコペニア・フレイルへの備え)、高齢者に必須の栄養素です。
- たんぱく質の目標量がいちばん高いのは、65歳以上の方です(1日総カロリーの15%を目標に)
- 不足しがちな原因は、必要な量が増える時期と、食べる量が減る時期が重なるから
- 毎食に、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のどれか一品を意識しましょう
時に、外食や宅食に頼ることは、「できない人」ではありません。むしろ今の時代は、「正しい知識を知っている人」「生活を楽しんでいける人」だからこその選択肢です。
正しい基準を知って、無理なく楽しい毎日を。健康資産を一緒に高めていきましょう。
出典
本文中の(※1)〜(※7)は、下の番号に対応しています。
※1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(令和6年10月11日公表)/たんぱく質 p.94〜95 目標量(13%・14%・15%/上限20%)、体重1kgあたり1.2g、フレイル・サルコペニアに関する記述
※2 厚生労働省「食事摂取基準を活用した高齢者のフレイル予防事業」(栄養・食育対策)
※3 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「サルコぺニア」(2024年1月30日更新)
※4 厚生労働省 広報誌「厚生労働」2021年11月号(フレイルの説明)
※5 厚生労働省 e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)「高齢者の低栄養予防」(2024年11月29日更新)
※6 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(2023年4月28日公表/2026年3月27日の正誤表を反映) 2つの食品の表のたんぱく質量は、この資料の数値をもとに算出 (肉・魚は「生」、うどん・ごはんは調理後の数値)
※7 国立長寿医療研究センター「良質なたんぱく質とは?(2)〜食事ごとのたんぱく質摂取と筋肉量〜」








